駅伝強豪実業団チームに一問一答!~富士通陸上競技部編~

駅伝強豪実業団チームに一問一答!
~富士通陸上競技部編~

年末年始の駅伝シーズンをデサントのユニフォームを着て戦う、富士通陸上競技部に特別インタビューを実施しました。
富士通陸上競技部は、デサントでアドバイザリー契約を結ぶ塩尻和也選手も所属し、長距離のみならず、短距離や跳躍系の競技にも注力する強豪チームです。
今回は駅伝の魅力やチームの特徴について、塩尻和也選手、高橋健一監督に一問一答形式でお答えいただきました。

記事の後半では、「寺田的陸上競技」でおなじみの寺田辰朗氏に、独自の目線でチームへのインタビュー記事を作成していただきました。

陸上ファン、レベルアップを目指す陸上競技者必見の内容となっております!是非ご注目下さい。

塩尻選手の一問一答

塩尻選手の一問一答

Q.陸上を始めたきっかけは?

塩尻中学まで陸上部がなかったので、高校入学を機に始めました。

Q.長距離走を始めたきっかけは?

塩尻幼い頃から長距離を走ることが、周りの子より得意でした。

Q.競技の好きなところ、嫌いなところは?

塩尻好きなところはタイムという1つの基準で結果を比較できるところ。嫌いなところは長期間休めない(笑)ところですね。

Q.駅伝の魅力は?

塩尻チームで1本のタスキをつないでいくところ、チームで結果を共有できるところです。

Q.大会前はどんなことをしますか?緊張しますか?

塩尻ルーティーンがないことが僕のルーティーンかもしれません。食べるものも決めていません。緊張は…どうなんでしょう。(しているのか、していないのか)難しいです。

Q.チームに入部を決めたきっかけは?

塩尻大学卒業後の競技をより高いレベルで行うには、富士通が一番合っていると思ったからです。

Q.チームの特徴は?

塩尻良い意味で個性的な人たちが揃っていることです。

Q.監督さんやチームメイトはどんな方ですか?

塩尻福嶋正監督は本当にしっかりされた方です。一緒に練習する機会が多いチームメイトはトラックがメインの選手たちですが、良い意味で我が強いですね。チーム内でもガツガツやっています。

インタビューを受ける塩尻選手

Q.ウエアやシューズへのこだわりは?
特にまわりの選手が厚底の中、なぜ薄底なのか

塩尻どちらも、感覚的にフィットすることが大事かな、と思っています。
シューズは抽象的な言い方になりますが、トータルで履いた感触が合っていて、走りの邪魔にならないことが大事。僕は人よりも地面を強く蹴るタイプなので、この走り方には薄底の方が合っていて、足の回転もスムーズだと感じています。

Q.デサントのイメージは?(ブランド、商品)

塩尻大学(順大)の頃から使わせてもらっています。すごく身近に感じられるブランドです。

Q.デサントの担当者の印象は?

塩尻フットワークが軽くて、たくさんの試合や、合宿にも来られている印象です。

Q.最後に今後の大会への意気込みを!

塩尻東日本実業団駅伝は良い結果(優勝)で終えられたので、この調子のまま全日本実業団対抗駅伝でも積極的な走りをして、優勝を目指せればと思っています。

高橋監督の一問一答

高橋監督の一問一答

Q.監督として心掛けていることは?

高橋時間を守ることです。

Q.選手とのコミュニケーションで心掛けていることは?

高橋タイミングにも気をつけていますが、話し方や言葉遣いに配慮しています。言葉ひとつでやる気にさせたり、その逆にさせたりすることあると思っています。

Q.駅伝の魅力は?

高橋自分が走っているときは楽しかったですね。今は怖さも感じますが、でも、楽しいですね。

Q.実業団チームにとっての駅伝とは?

高橋結果を出さないと大変なことになりますね。昨年、東日本予選を通過できず、色んな人に心配していただきました。今まで予選を通って当たり前(29年連続全国大会出場)のように思って来ましたが、油断はしてはいけないと痛感しました。今年はトップで通過できましたが、去年のことが良い薬になったなと思っています。

Q.今後さらに駅伝を盛り上げるには?

高橋大学駅伝で活躍して注目された選手を、実業団でもしっかり育てられれば、その選手のファンも喜んでくれます。大学より強くなったよと、と言えるように実業団全体で頑張れば盛り上がると思います。

Q.駅伝の監督としてのやりがいは?

高橋結果が出れば監督をやっていてよかったなと思います。選手が走ってくれることが一番ですね。結果が悪ければその反対の気分になります。

Q.ライバルチームはどこですか?どうしてそう思いますか?

高橋旭化成です。元旦の全日本実業団対抗駅伝で4連覇していますが、そろそろ止めないといけません。私が現役だった2000年の大会で、旭化成の連覇を止めたのが富士通でした。その仕事を今度は、監督としてやってみたいですね。

Q.監督としてプレッシャーや難しさを感じることは?

高橋プレッシャーは、結果を出さないといけないことです。難しいのは選手選考です。同じ力の選手がいた場合、どちらを起用するか。調子が良い選手でも、一斉スタートや向かい風の中の単独走など、区間特性に適していないこともあります。試合実績や練習の消化率など掘り下げて、頼む選手にはこちらの気持ちを託し、外れてもらう選手にはしっかり理由を説明しないといけません。

Q.駅伝のメンバー選出はどのような過程でされますか?

高橋試合結果と練習の消化率などで選びます。調子の良い選手を外すこともありますが、それをするときはチーム状態が良いときですね。チーム状態が悪いときは、脚が痛い選手でも我慢して走ってもらわないといけません。

Q.チームの特徴は?

高橋色んなタイプの選手がいて、色んな種目の選手がいることです。

Q.塩尻和也選手の特徴は?どんな選手ですか?

高橋思った以上に肝が据わっている選手です。大舞台でもビビらず、力を発揮します。

Q.チームのユニフォームやウエアへのこだわりは?

高橋富士通のユニフォームを着ることに、選手はプライドを持たないといけない。短距離ブロック、競歩ブロックのコーチともそう話しています。格好良くて、高校生、中学生から憧れられるユニフォームでないといけないと思っています。

Q.デサントのイメージは?(ブランド、商品)

高橋自分たちにとってデサント製品は、ずっと身近にありました。着るもの以外でも帽子、リュックなどの身の回りの品々もそうです。なくなったら困りますね。

Q.デサントの担当者の印象は?

高橋少ない人数でも細かく動いてくれて、感謝しています。今は富士通のロゴ入りマスクを発注しています。マスクは品薄になっているようですが…。《「納品を急ぎます!」(担当者)》

Q.最後に今後の大会への意気込みを!

高橋全日本実業団対抗駅伝は他にも強いチームがいますが、まずは連覇している旭化成を止めます!

寺田辰朗氏インタビュー記事

東日本実業団駅伝で見せた度胸のよさ

寺田辰朗氏インタビュー記事

 富士通の高橋健一駅伝監督は、塩尻和也の試合度胸に少し驚いていた。東日本実業団駅伝(11月3日)の6区で、富士通はGMOインターネットグループに追いつかれていた。

「アンカー(7区・12.6km)の塩尻は、小差でタスキを受けるのが確実な状況でした。ラストのキレ味を持っていないので、走りのタイプ的に塩尻はアンカー向きではありません。並走で来られたら嫌だったと思いますが、ビビっている素振りがありませんでした。普段はフワッとして優しそうな性格ですが、試合になったら堂々としている」

 東日本大会は、塩尻が富士通のユニフォームを着て走る初めての実業団駅伝だった。入社1年目の19年は9月に大ケガ(右膝の前十字靱帯)をしたため、駅伝に間に合わなかった。東日本大会はそれなりに緊張するシチュエーションだったといえるだろう。

 実際、塩尻は緊張していた。「走り出してからも、最後まで引き離せずスパートの差で負けるシーンがちらついていました」と振り返っているのだ。

 トップアスリートは追い込まれた状況でも決してあきらめず、勝つことしか考えない。そういった強いメンタルを持っているのだが、塩尻は少し違ったタイプのようだ。

 しかし7km付近でGMOを引き離した塩尻は、その後は危なげなくトップを独走し、26秒差で優勝のゴールテープを切った。

「離したところは僕がスパートしたわけではありません。離れそうだとわかってペースが自然に上がった可能性はありますが」

 ロードでは塩尻の実績が勝るが、並走していた選手の5000m、10000mのシーズンベストは塩尻より上である。メンタル面で臆して走りに影響が出たら、簡単には引き離せなかったはずだ。

「自分が負ける頭の中のイメージと、実際の動きを連動させないようにしました。悪いイメージを持っても、そうならない走りをするんです」

 塩尻はそれが当然のように話すが、普通の選手にはできないことだろう。プレッシャーのかかる大会でもそれをやってのける。全日本実業団対抗駅伝で勝敗を分ける場面を走ることになっても、塩尻は持っている力をしっかりと発揮できる。

3000m障害からハーフマラソンまで走るマルチランナー

 塩尻の勝負強さは学生時代の実績にもはっきり見てとれる。3000m障害で2年時に2016年の世界大会、4年時にはジャカルタ・アジア大会に日本代表として出場。日本インカレは4連勝し、記録的には8分29秒14の学生歴代3位をマークした。

 今も語り継がれているのが2016年の世界大会出場のプロセスだ。参加標準記録を破ることができなかったが、世界的にも予定の人数がその記録に達しなかったため、世界陸連のインビテーション(招待)の形で塩尻の出場が決まった。直前の決定だったにもかかわらず、塩尻に浮き足だったところはなかったという。

 塩尻のもう1つの特徴がマルチランナーであることだ。5000m、10000m、ハーフマラソン、そして駅伝でも学生トップレベルの走りをした。3年時は10000mの走力アップに注力し、ユニバーシアードで銅メダル、11月には27分47秒87(当時学生歴代4位)をマークした。ハーフマラソンは4年時に1時間01分22秒(当時学生歴代5位)で走った。マルチランナーとしては、歴代でも学生ナンバーワンといえる活躍だった。

 注目度の高い関東地区の学生駅伝では、4年連続でエース区間の2区に出場。3年時まではいまひとつの成績だったが、4年時には当時の日本人歴代最高タイムを更新した。

 昨秋のケガで、4カ月以上も走る練習ができなかった。コロナ禍もあって復帰は今年7月。東日本実業団駅伝で区間賞は取ったが、12月の日本選手権3000m障害は5位と、完全復活はしていない。しかし全日本実業団対抗駅伝は、チームが優勝を目指し盛り上がりを見せている。塩尻の集中力が高まって、学生時代のように爆発的な走りとなって現れる可能性は十分ある。

どの区間にも起用できる選手

 富士通は言ってみれば“マルチランナー型のチーム”である。マラソン日本代表の中村匠吾、1500m・5000mの松枝博輝、5000m・10000mの坂東悠汰、10000m・ハーフマラソンの鈴木健吾、3000m障害の潰滝大記、そして自身がマルチランナーの塩尻と、主力選手のタイプ(専門種目)がこれだけ異なるチームは富士通だけだろう。上記の鈴木以外は全員、日本選手権優勝や日本代表経験がある。鈴木も今年の全日本実業団陸上10000mで日本人2位となっている。

 だが昨年は、個人のスケジュールを重視した結果、東日本実業団駅伝前に故障者や体調が整わない選手が多く出て、17位で全日本大会出場権を逃してしまった。結果としては6区の選手が、走行中に痛みが出て区間20位とブレーキを起こした結果だったが、駅伝チームとしては足並みが揃わなかったことが背景にあり、一番の問題点だった。

 今年はコロナ禍で海外合宿ができない事情もあったが、それ以前に合宿など、同じ練習場所で行う期間を増やした。高橋駅伝監督によれば、スタッフが選手の状態をしっかり確認することで、故障のリスクが減った。強化という点でもプラスの効果があったという。

「短い距離が得意な選手は、長い距離の練習がなかなかできないのですが、一緒にやることで妥協しないで苦しい練習を乗り越えられます」

 駅伝となると1500m・5000m型の選手でも12~15kmの距離を走る。富士通のようなチームには特に、効果があったのかもしれない。

 全日本実業団対抗駅伝の富士通は、1・3区候補は坂東(日本選手権5000m優勝)、松枝(同2位)、浦野雄平(東日本実業団駅伝1区区間賞)と、今季の実績十分の選手が揃っている。2区のベナード・キメリは世界ハーフマラソン選手権9位と、世界的なレベルのランナーだ。10000mの自己記録が27分台の塩尻は、1・3区で通用するスピードがある。

 最長区間の4区はマラソン代表の中村匠吾が最有力候補だが、状態が上がれば鈴木と塩尻もエース区間の任に十分耐えられる。上りもある5区は、同じように上りが多い関東の大学駅伝2区を快走した塩尻向きのコースかもしれない。

 塩尻は開催地である群馬県出身で、風の強い場所を走ってきた。5区以降は強い向かい風となることが多いが、塩尻が力強い走りをしていくイメージを持てる。アンカーの7区でも、東日本予選では中間走で勝負をつけられることを示した。

 マルチランナーの塩尻は自身の状態さえ上げていけば、どの区間でも区間賞争いができる。富士通にとって、ジョーカー的な役割を期待できる選手である。